上野真裕が考えるバイクライフ
気持ちの躍動感をキープするアイテム
-ショップの近況を。
上野 31歳の頃に熊本に戻り、独立開業して25年になります。その前は、鈴鹿のレーシングチームにいました。長年レースに携わり続けている経験もあり、レースやサーキットを出入りする顧客層を主なターゲットにショップ運営をしてきました。しかし、最近はバイクを所有する方々の平均年齢が高くなっており、顧客層にも変化が感じられます。特に女性ライダーや、子育てをひと段落して久しぶりにバイクに乗ってみようかといったリターンライダーが増えています。ショップでは、こうした最近のニーズにも対応しながらやっていきたいと思ってます。
-最近の傾向などは。
上野 イタリアのバイクメーカー「ドゥカティ」のディーラーを始めて20年になります。そうですね、やっぱりヨーロピアンの中でもイタリアのバイクですから、バイクだけ限らず、イタリア系のウエアーを着てみたりなどファッションへのこだわりも強く、「ちょい悪オヤジ」に憧れるお客さんが多いのも特徴だと思います。また、ここでバイクを購入したお客さんは不思議と良い感じでちょい悪系になっていくんですよ(笑)。僕も一緒に楽しんでます。
-ドゥカティの魅力は。 上野 ドゥカティと言えば、このL型2気筒のエンジンです。エンジンが生む音と振動、個性ある独特な感触がたまりませんね。一度ドゥカティに乗り始めるとずっとドゥカティに乗り続ける人が多いのは確かです。エンジンの爆発を直接感じることができる。その荒々しさが醍醐味だと言えます。 そして、ドゥカティは、純正のライダージャケットを着ていてもお洒落で、着たままでカフェやレストランに気軽に行けるスタイリッシュさがあります。メーカー側もファッションを含めたバイクの楽しさを提案しており、バイクのモデルそれぞれに合わせたファッションアイテムも充実しています。最近ではファッションブランドのディーゼルとコラボレーションした商品を開発するなど、バイクとアパレルの両方に力を入れています。 -おすすめのバイクは。 上野 「Ducati SCRAMBLER Classic(ドゥカティ スクランブラー クラシック)」です。1962年に発売された初代スクランブラーのデザインを色濃く生かしたニューモデルで、同時発売の4つのスタイルの中でもヴィンテージ感が漂う「クラシック」がおすすめです。ホイールにアルミ製のワイヤースポークを装備するなど各所にドゥカティならではのこだわりと存在感を発揮。エンジンはL型空冷2気筒を搭載してます。ドゥカティは高出力なバイクですが、このスクランブラーは、ドゥカティらしさを残しながらも、気軽に走れて乗りやすいバイクと言えます。女性やリターンライダーには持ってこいです。 また、マフラーやシートなどラ・ベレッツァの自社オリジナルパーツでカスタムを施しています。これまでバイクに興味がなかった層からも注目を集めそうなお洒落な一台となってます。 |
-おすすめのスポットは。 上野 大観峰、阿蘇、三愛レストラン付近でしたり、多くのバイクが南阿蘇に集う「ピースライド」を楽しんだり、ASOバイカーズベースに立ち寄ったりすることが好きですね。バイクに携わる人間として、これからも阿蘇というロケーションを上手く生かし、大切にしていきたいと思います。 -バイクとの出会いは。 上野 小学校の頃からバイクマンガの「ワイルド7」や「750(ナナハン)ライダー」を読んでバイク憧れて興味を持っていました。高校生になって直ぐの夏休みに中型免許、冬休みには大型免許を取得しました。中高と部活でバスケットボールをしていましたが、バイク購入後はオートバイばかりいじってみては乗って楽しんでいました。その後、一般企業に就職し、名古屋に勤務していた頃、鈴鹿にあるオートバイのカスタムパーツ製造販売のOVERレーシングの社長が熊本出身で、その出会いが転機となってOVERレーシングで働き始めました。1993年に熊本に戻り、OVERレーシングの九州総代理店として独立、「ラ・ベレッツァ」が誕生しました。 |
-バイクの楽しみ方は。 上野 ミニバイクの耐久レースなどにも出場し、走ったこともあるんですが、人と無理して競争する必要はないと思うんですよ。これは、ツーリングで走る際にも同じことが言えます。例えば、前を行く人には「速く走ってね」、後ろを行く人には「頑張って付いてきてね」とよく言うんですが、そうなると前の人にはストレスになり、後ろの人にはプレッシャーになります。ですから、マイペースで走るのが一番です。バイクも400ccから1300ccまであり、種類も様々です。あまり前後を気にせずに、自分のバイクで自分のリズムと自分のペースに沿って、自分のスタイルでバイクを楽しむことが大切だと思います。あまり人と調整しすぎても面白くないと思うんですよ。 なかには日頃おとなしい人でもバイクに跨ってヘルメットをかぶると自分の周りは全部敵だ、なんて思う人もいるんですよ(笑)。やはり、若いうちは自分をカッコ良く見せたいと思う気持ちが誰にでもあるんだと思います。50歳を過ぎるとそれが何となく分かってきました。 サーキットでの走行会も企画しますが、会の目的は速く走ることではなく、レーサーと一緒に走ってみて、凄い走りを目の当たりにすることで、これまで自分は速いと粋がっていたライダーが、井の中の蛙だったと気付かされ、走りが変わり、それが安全につながっていくこと、それが狙いでもあるんですよ。対向車が多かったり、ガードレールがあったりするところでは無理な走りはしないといった感じでね。そうすると走りに余裕が生まれてきて、これまでセンターラインしか見ていなかった人が、より景色に目が行くようになるなど新しいバイク楽しさが増すと思うんですよ。 -人生においてバイクとは。 上野 バイクは自分の中にある気持ちの躍動感をキープするアイテムだと思います。普段は職場で真面目に働いている人が、装いを変え、お洒落をしてバイクに跨って休日を楽しんでいる姿。阿蘇の大観峰などでヘルメットを脱いでみると予想外に年配の方だったということはよくあります。バイクに乗ることで精神的な躍動感と若さを維持しているように感じますね。そしてバイクという共通の趣味を通じて普段とは全く違う自分の時間を持ち、年齢や肩書の枠を越えた新しい出会いの輪が広がる、そんな楽しさがバイクにはあります。 -ありがとうございました。 雑誌「くまもと経済」は書店で販売中 |