
川上 祥史が考えるバイクライフ
夢を与え続け、人をつなげてくれるもの
-ショップの特徴を。
川上 バイクを売るだけではなくて、お客さんにどうバイクライフを楽しんで頂くかに重点を置いています。つまり、買って頂いたお客さんの声をしっかり聞きながら、どうやったらその人に合ったバイクの楽しみ方を提案できるだろうか、どうやったらその後のバイクライフを長く一緒に楽しんでいけるだろうかといったことを常に考えています。
楽しむジャンルは様々です。ツーリングでも、サーキット走行でも、カスタムでも、そのお客さんが何を求めているかを引き出してあげるのが、重要だと思っています。例えば、ツーリングが好きな方にもサーキット走行会にお誘いすることもあります。それによって良い意味で、公道でスピードを出しすぎることの危険性にも気付いて頂く機会になり、ツーリングをさらに安全運転で楽しめるようになります。また逆に、サーキットばかりを走っている方にはツーリングに誘ってみたり、サーキットでタイムに伸び悩んでいる方には、オフロードでバイクの基本を学んでみませんかという感じで、色々な提案をしています。何か一つの枠にとらわれず、お客さんに合ったバイクライフを楽しんでもらい、満足して頂くのが一番大切だと思っています。
-ショップの近況は。
川上 近況としては、ライダーの育成にも力を入れてきました。独立した時から自分のレース経験等を生かして、若い人達にもバイクの良さ、楽しさ、安全性などを伝えたいと思っていました。そんな中、15年間レースにチャレンジし続けてきて、今年初めて全日本スーパーモタードでチャンピオンをうちのクラブメンバーから出すことが出来ました。レースを始めた頃からうちで育ってきたレーサーがモタードの全日本選手権でチャンピオンに輝き、喜んでいます。

―バイクとの出会いは。
川上 小さい頃から車やバイクが好きで、小学校の時に「汚れた英雄」というオートバイレースの映画を見て、それから俺は将来オートバイレーサーになるんだって、それ一筋で思ってきたんですよ(笑)。高校に入ってからアルバイトをして、貯めたお金でモトクロスを始めたんですよ。それからはずっとバイクの世界にどっぷりです。本当はロードレースが良かったんですけど、さすがに高校生のバイト代では手も出なかったんですよ。それにアメリカの有名なライダーたちもモトクロスで基本を練習していると聞いたことがあったので、まずはモトクロスから始めたんです。
それから、静岡のほうで、ヤマハ関連の仕事に就職しました。そして、30歳の時に独立したんです。それまではあまりにもレース、レースで、バイクにどっぷり浸かりすぎていて、自分自身もっと楽しくみんなとバイクに乗れたら良いなって思って独立を決心したんですよ。
モトクロスを長年やっていたこともあり、砂丘や砂漠といった意味の「Dune(デューン)」とバイクを意味する「moto(モト)」を組み合わせてショップの名前に使ったんです。

―バイクの楽しみ方は。
川上 バイクの楽しみ方にも色々なジャンルがあると思いますが、そうですね、「割り切り方」と言えるんじゃないでしょうか。公道でツーリングに行くときは、その行く先々で食べる美味しいものを目的に、そこまでの道をみんなと楽しく走り、休憩時間に会話で盛り上がる楽しさがあります。そして、周囲に迷惑を掛けずに思いっきり走りたいと思ったらサーキットに行ったり、そのジャンルによって割り切って楽しむようにしています。
特に熊本は恵まれていると思います。阿蘇や天草といったツーリングに絶好のルートが沢山あって、そして、HSRという市街地からこんな近くにサーキットがあるところは他にはありませんよ。全国あちこち行きますがサーキットって普通は山奥とか、市街地から随分離れたところにあるのが普通で、こんなにアクセスが便利で近くにあるのは、熊本と鈴鹿ぐらいではないでしょうかね。
-ルールやマナーで気を付ける点などは。
川上 バイクショップをしていますので、事故の修理も扱います。一番よく聞くのが、車が突然まがってきた左折巻き込みなんですね。僕からすると、車が悪いという以上にバイクがそこを走っているから事故に合うケースもあると思うんですよ。ですから、バイクに乗っている人たちも防衛運転に努めるべきで、「バイク=危険だ」という見方を取り下げたいと思っています。危険なのはバイクではなく、そこに乗っている人の心なんですよね。きちんとした運転を常に心掛けいればバイクはまったく危険な乗り物ではないんですよ。僕も27年無事故無違反です。ツーリングではすり抜けや無理な追い越しは絶対やらないようにしていま

す。
-乗る際のファッションなどは。
川上 オートバイのウェアーの良いところは、普段ではなかなか着ないような明るめのウェアーや派手な色使いのヘルメットを被ったりと、普段は表に出せない自分のカラーを出して楽しむところはありますね。もちろんデザイン的にも最近はプロテクションなどもしっかりとしたカジュアルなウェアーも増えています。うちでは「HYOD(ヒョウドウ)」さんのブランドなども多く取り扱っています。
-おすすめのバイク。
川上 「BMW R nineT」です。伝統の水平対向エンジン(通称ボクサーエンジン)が生み出す音と振動は、純粋に走りを楽しみたいライダーにとって歓びと情熱をバイクライフに吹き込んでくれると思います。シートの高さや幅も日本人に合った車体は公道でも疲れず安定した余裕ある走りを提供してくれます。
-おすすめのツーリングスポットは。
川上 当然、熊本に住んでいますので、阿蘇にも常日頃よく行くんですが、天草の方面もおすすめです。地図とかで調べてみると天草にも結構多くの広域農道とかがあって、景色の良いツーリングスポットや天草の歴史に触れながら走ってみるのも楽しいですよ。たまには天草の鬼池港からちょっと足を延ばしてフェリーで島原に渡って長崎を回るのもおすすめです。休憩と思ってフェリーで熊本港に戻ってくれば、ぐるりと一周できます。
-人生においてバイクとは。
川上 以前は一途にバイク、レースが好きという想いだったんですが、今はバイクがあって人生があるというか、人生そのものなんです。高校の頃から社会人になってこれまで、ずっとバイクの世界で生きてきましたから、バイクを通じて出会った人と人とのつながり、共通の趣味を持った仲間の素晴らしさを感じます。人生においてバイクとはというよりも、バイクがあるから、人生があるようなものです(笑)。バイクが無ければ、生きる気力を失ってしまうでしょうね。
これまで常に夢を見ながらバイクに熱中してきました。夢を追いかける中で、様々な人と人との出会いがありました。これからもそれは変わらないと思います。ですから一言でいうと、人生においてバイクとは、夢を与え続け、人をつなげてくれるものです。
-ありがとうございました。
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