中尾真樹が考えるバイクライフ
喜怒哀楽、人生そのもの
-ショップの特徴を。
中尾 ショップの特徴は、種類に限られない幅広いジャンルを取り扱っている点ですかね。BMWやDUCATIなどの海外メーカーもあれば、国産メーカーもありますし、自転車・原付からレース用のバイクまで車種を選ばず色々なお客さんに来て頂いています。ですから、個性が無いところが、個性と言えるかもしれませんね。基本、頼まれた修理は極力お断りしないようにしています。実は、これってレースシーンでも同じようなものなんですよ。つまり、ライダーが望むことには僕らエンジニアがどうにかしてでも必ず応えなければなりません。
―レーシングサービスのお仕事も。
中尾 はい。どちらかというと今ではレースの方が専門かもしれませんね。全日本選手権では年間を通してイタリアのタイヤメーカー「ピレリタイヤ」のエンジニアとして、チーム「モリワキ」さんにタイヤを供給するなどレーシングサービスの仕事にも従事しています。アドバイザーとしてレースがある度に全国あちこちを回っています。その知識や情報がうちのショップで企画する草レースではフィードバックし、参加者の皆さんには喜んで頂いていると思います。また、普段はスピードを出さない方でも気軽にサーキットで試乗してもらう体験走行会も開いています。こうしたサーキットの敷居を下げるような方向にも取り組んでいます。
―サーキットで走る良さは。
中尾 サーキットで走るお客さんは、公道で落ち着いて、余裕のある運転をされるようになる方が多いと思いますね。ガス抜きではありませんが、やはりモータースポーツですので、公道よりもスピードは出ます。しかし、スポーツと言われるからには、そこにはきちんとした守るべきルールがあります。ルールのあるサーキットで走るからこそ安全であり、スピードをある程度出していても、大きな事故になることは少ないわけです。ですから、うちの事故修理のリストを見てみても、大型バイクの事故修理で入庫される方はほとんど無いですよ。ですから、自動車学校を卒業した後の安全運転を学ぶ機会として、そして自分のテクニックを確かめる上でも、サーキットは非常に良い場所だと思いますよ。
-ショップの課題などは何か。
中尾 ライダーさんの心得感が気になっています。というのも、バイクに乗ってくれる世代が年々上がってきており、10年後、20年後を考えたときに将来どうなるのかが心配なんです。特に今の50歳前後の世代が一番多いので、この世代が抜ける頃にどうなるのかが、一番気掛かりにはなっていますね。ですから、若者をどうやって取り込んでいくかが大きな課題に感じており、メーカーさんや自動車学校さんとタイアップしながら少しずつ取り組んでいくしか方法はないかと思っています。
-バイクカスタムのおすすめポイントは。
中尾 ホンダの「CBX1000」にモトジャンキーオリジナルのカスタムを施しました。「CBX1000」は海外輸出モデルとして1978年から1982年までのわずか4年間しか製造されなかった貴重なモデル。空冷4ストロークDOHC並列6気筒エンジンは見てのとおり、その大きさにもインパクトがあります。こちらは、その中でも1981年発売のCタイプです。カスタムのポイントは、ホイール、ショックアブソーバー、ブレーキといった足周りを現代的なパーツに換装、マフラーをはじめ車両全体を軽量化することにより、旧車であっても快適で安全な乗り味で楽しんで頂けるように仕上げています。
-バイクとの出会いは。
中尾 小さい頃からバイクには興味がありましたね。中学生の時には兄弟のバイクのエンジンをばらしてみたりして、しょっちゅう怒られてました(笑)。バイクの免許を取得するときも、親は随分心配して反対もされました。しかし今思えば、その親の心配と反対から学んだことは大きく、もし何かあった時はどうするのかという責任を持つことの大切さ、そして、周囲に迷惑を掛けない安全運転の大切さを教わったような気がします。
-おすすめのツーリングスポットは。
中尾 やっぱり阿蘇しかないですよ。20分以上信号なしで走れる山道は全国どこを見まわしてもないと思います。これだけ壮大な景色を眺めながら走れる、そんな阿蘇以外に薦められるところはないですよ。雲海を横に眺めながら走り抜けていくと、もうたまりませんね。
ついこの間は、全日本選手権の外国からの関係者を連れて走ったんですが、皆さんものすごく感動されていました。意外だったのは、小さな裏道で木々に覆われて木漏れ日が差し込んでいるトンネルのよう小道を特に気に入っていたことです。ものすごく空気が澄んでいて、外国人の皆さんがとても良い気持ちだと喜んでいました。バイクは季節の変わり目や気温変化を肌で感じながら走るので、阿蘇の大自然を楽しむのに向いていると思います。
―バイクの楽しみ方は。
中尾 早朝5時ぐらいから出発して、風を感じながら走るのが好きですね。阿蘇のミルクロード方面に走れば、ちょうど今頃、秋の季節には雲海も見えますし、ちょっとひんやりした気温を感じながら走ると爽快ですよ。何よりも、朝早いので、車も少なく、人に迷惑かけないのが一番です。
ですが、僕の中にもルール付けがあって、朝乗る際に何となく気が向かない時は絶対に走らないようにしています。それを無理して走った時に限って、不思議と危険なシーンに遭遇したりするんですよ。ですから迷ったら絶対に乗らないようにしています。
-バイクに乗る際のファッションなどは。
中尾 革のつなぎはレースでは定番です。ほぼフルオーダーで、命を守るためにも大切なものですから結構な金額はします。ですが、好きな方はこだわったデザインで趣味の一部として楽しまれていますよ。公道を走る際でもプロテクター付きのおしゃれなジャケットや膝パット入りのジーンズも増えています。膝パット入りのジーンズは仕事でも膝を地面に着いて作業しますので、重宝しています。
-人生においてバイクとは。
中尾 喜怒哀楽を共にしてきた人生そのものです。18歳で大型バイクの免許を取得してすぐの頃、必死にアルバイトをして買ったヤマハのFZR750R(OW01)*を盗難されたことがあったんですよ。あの時はすごいショックでしたね。カウルの無い状態で見つかった時はほっとしました。バイクを買った時の喜びから盗難された時の哀しみと怒りまで感じました。そして、レースでゴールした瞬間の鳥肌の立つ楽しさ、忘れられませんよ。まさにショップ名にも使っているバイク中毒(モトジャンキー)になるような感覚です。僕にとってバイクは人生そのものとしか言えません。
-ありがとうございました。
*89年発売当時定価200万円限定500台のホモロゲーションモデル
単車工房 モトジャンキー
合志市須屋1930-6
TEL 096-341-5571
営業時間 10:00~20:00
定休日 毎週水曜日/イベント開催日
/新車・中古車、原付から大型バイクまで幅広い車種を取り扱う。レース活動とカスタムバイクに関しては全国的に知られる。中尾代表自身もイタリアのメーカー「ピレリタイヤ」のタイヤエンジニアとして全国のレースを飛び回る。県内では「アイアンホースドリームカップ」といった数々のレース運営にも携わったおり、サーキットに縁がなかった人たちへの体験試乗イベントも力を入れている。一度はサーキットを走ってみたいと思ったら、ぜひ相談してみては!